世界には多くの神話や伝説が存在しています。
その多くは神や英雄の功績を称えるものですが、それに対抗する存在としての悪の存在も必ず描かれています。
中にはそのバラエティ溢れる個性故に、神や英雄以上のインパクトを残すものも多く存在し、時には主人公である神や英雄を危機に陥れることもあります。
今回はそのような伝説に登場する悪魔・怪物の中から、特に最強と呼べる部類のものをご紹介しましょう。
10位 メドゥーサ
引用:Visit Tuscany
ギリシャ神話に詳しくない人でも、恐らくは誰でもその名前は知っているほど有名な怪物メドゥーサ。
その不気味に輝く目を見たものを石に変えてしまう、恐ろしい魔力を持った最強の怪物です。
また首を切られて死んでもなおその魔力は生き続け、海の怪物ケートスを石に変えてしまったりもしています。
そのような恐ろしい怪物メドゥーサですが、元々は一人の美しい女性でした。
怪物メドゥーサの物語は、一人の女性の悲劇の物語でもあります。
メドゥーサは、海の神ポルキュスとその姉ケートーと間に、ゴルゴーン3姉妹の3女として生まれました。
美しく長い髪を持つ美少女で、女神アテナに仕える神官だったとも言われています。
その美しさ故に海洋神ポセイドンに見初められ、あろうことか女神アテナの神殿でポセイドンと交わってしまったのです。
女神アテナの怒りは凄まじく、メドゥーサを醜い怪物に変えてしまい、またそれに抗議した二人の姉も同様に怪物に変えられてしまいました。
美しかったメドゥーサの髪は、その一本一本が生きた蛇に変わり、口元にはイノシシのような牙が生え、肌は青いウロコで覆われ、背中からは大きな金色の翼が生えてきました。
顔の肌もひび割れ、眼窩は飛び出し、大きく長い舌をだらりと垂らしているという恐ろしい容姿に変わってしまったのです。
呪いはそれだけではありません。
目を見たもの全てを石に変えてしまうという恐ろしい魔力を与え、その魔力ゆえにメドゥーサは世界の西の果てのヘスペリデスの近くで、孤独な隠遁生活を余儀なくされたのです。
そしてその魔力を何とか手に入れようと、多くの戦士がメドゥーサの命を狙いに来ますが、その全ては憐れにも石に変えられてしまいました。
そしてついに神々の助けを借りた半神半人の英雄ペルセウスにその首を切られ、哀れな生涯を閉じることになるのです。
その切られた首は女神アテナのもとに届けられ、アテナは自らの盾にその首を飾り付け、まさしく最強の盾としたのでした。
神殿で犯した軽率な行為が、一人の美少女の人生を悲劇に変えてしまった物語ですが、ちなみに海洋神ポセイドンは当然のごとく何のお咎めもなしでした。
なかなかに理不尽な話です。
最強の怪物メドゥーサの魔力は、現実の世界でも多くの戦士を魅了しました。
古代ギリシャやローマでは、多くの戦士が御守りとしてメドゥーサの首の絵を鎧や盾に描いたといわれています。
ポンペイ遺跡から発見されたアレキサンダー大王の肖像画にも、鎧の胸の部分にメドゥーサの首が描かれているのを見ることができます。
9位 ラーヴァナ
引用:Flickr
ラーヴァナはインドの叙事詩『ラーマーヤナ』に登場する魔王で、ラーマーヤナ物語の主人公ラーマの宿敵です。
10の頭と10対の腕を持った姿で描かれ、ランカー島を納めるラクシャーサ(羅刹)の長です。
過去にランカー島を追われたラクシャーサ族の再興を願い、1000年もの間苦行を続けていたと言われるラーヴァナですが、その苦行の内容がまた凄まじいものでした。
自らの首を切り落とし、一つずつ火にくべるという過酷なものでしたが、最後の一つの首を切り落とそうとした際に、創造神ブラフマー許され、その際に「神にも悪魔に対しても不死身となる」という特権すら得ることになるのです。
力を手にしたラーヴァナは、様々な神や悪魔に戦いを挑み、シヴァ神には敵わなかったものの、チャンドラハースという名の三日月の剣を譲り受け、更に当時ランカー島を治めていたクベーラ神を退かせ、ランカー島を再び手中に収めました。
ますます驕ったラーヴァナは、雷神インドラすらも破り、冥府まで乗り込みヤマ神(閻魔)にも戦いを挑みます。
このように世界中を荒らしまわり、更には戦闘で奪った人妻や娘たちをランカー島に連れ去ってしまったため、神々は困り果て、最高神ヴィシュヌに助けを求めることになるのです。
神では倒せない魔王を打ち倒すため、ヴィシュヌは物語の主人公である人間ラーマに転生しました。
ラーマは最愛の妻シータをラーヴァナに奪われたことで更に怒りに火が付き、結局ブラフマーから授かった神々のエネルギーが満ちた矢、ブラフマーストラを放つことで遂にラーヴァナは打倒されるのでした。
一説では、人の子が魔王を倒すという物語のパターンは、桃太郎などの日本の昔話にも大きな影響を与えたともいわれています。
8位 アポピス
引用:Dragon Dreaming - WordPress.com
アポピスは古代エジプト神話に登場する大蛇で、闇と混沌を象徴する存在であり、太陽神ラーの最大の敵でもあります。
この世界が創造される前の混沌の状態から存在すると信じられており、世界が創世され秩序が生まれたことを嫌い、それを以前の混沌状態に戻すために様々な悪事を働くと信じられていました。
毎晩ラーの乗る太陽の船を攻撃し続け、また冥界の水を飲み干しなんとかそれを座礁させようとし、昼間天界でアポピスが暴れると天気が荒れるとも信じられており、またアポピスが太陽を飲み込んでしまうと日食が起きるともいわれていました。
アポピスと神々との戦いはどちらかが完全な勝利を収めることなく永遠に続くと考えられ、アポピスは捕らえられ切り刻まれてもそのたびに復活すると信じられていました。
更に冥界に捕らえられたアポピスの近くを死者の魂を乗せた船が通るとそれを襲い、そして魂を喰らってしまうとも信じられており、古代エジプトの人々はアポピスを避けるための呪文が書かれた『死者の書』と呼ばれる書物を、遺体とともに埋葬してたのです。
世界のあらゆる秩序を乱す絶対悪として信じられていたアポピスですが、各地の宗教施設においては蛇を打ち倒すことによって、世界の秩序を保つという儀式が行われていました。
一方では、太陽を飲み込み日食を起こした後には必ずその太陽を吐き出すことによって日食から回復し、何度打ち倒されてもまた神々に戦いを挑む様から、復活の象徴とも考えられてもいたようです。
古代エジプト人たちは、自分ではコントロールできない気象や災害はすべてアポピスの仕業と考え恐れていましたが、善と悪の戦いには永遠に終わりはないということを知っていたのかもしれません。
7位 ヒュドラ
引用:Word on Fire
ヒュドラはレルネーの沼に住む大蛇で、巨人テュポーンと半人半蛇の怪物エキドナとの間に生まれました。
巨大な胴体に9本の首を持っており、首を切り落としても傷口から2本になって再生してしまい、更に中央の首は不死身でした。
また恐ろしい猛毒を持った息を吐き、内臓や血にも猛毒を含んでおり、仮にその体に触れなかったとしても、ヒュドラが寝ていた場所を知らずに通っただけで猛毒に侵され、苦痛のうちに絶命すると言われていました。
ヒュドラは、ゼウスの妻である女神ヘラが英雄ヘラクレスを倒すために育てたとも言われています。
ヘラはゼウスの不倫によって生まれたヘラクレスを激しく憎み、ヘラクレスを亡き者にするために最強のモンスターとしての訓練を授けたのです。
そのためか、その恐ろしい外観だけではなく性格も非常に厄介で、時折レルネーの沼の麓に降りて来ては街を襲い、そして町の人々を貪り食いました。
そしてついにヘラクレスは王にヒュドラ退治を命じられ、両者の激しい戦いが始まったのでした。
毒を吸わないよう口と鼻を布で覆ったヘラクレスは次々とヒュドラの首を切り落としますが、その首は少なくなるどころか2本になって再生してしまうために、逆にどんどん増えていってしまいます。
そこでヘラクレスは切り落とした首の傷口を、すぐに松明で焼くことで首の再生能力を奪います。
次々と首を失ったヒュドラは、ついには不死身の中央の首も切り落とされ、ヘラクレスはその首を地中深くに埋め、上に重い石を置いて封印してしまいました。
こうして見事に退治されてしまったヒュドラですが、その猛毒が死してなおヘラクレスを苦しめることになります。
毒を持った胆汁を矢に塗り付けることによって最強の矢を手に入れたヘラクレスですが、その矢で誤って師匠であるケンタウロス族のケイローンを射抜いてしまいます。
不死身のケイローンは死ぬことはありませんでしたが、猛毒の苦痛に死ぬこともできずに苦しみ続けることとなり、ついには不死の体を返上して死を選ぶことでやっと苦痛から解放されます。
ヘラクレス自身も騙されてヒュドラの毒が塗られた服を着てしまい、その毒に全身を蝕まれることとなります。
激しい苦痛に耐えかねたヘラクレスは、ついには自身の体を燃やし、天へと昇って行ったのでした。
ちなみに現実の世界にもヒュドラから名を取った生物が存在しています。
それは淡水に住む大きさ1cmほどのクラゲのような生き物で、名をヒドラといいます。
体からは数本の触手が生えており、体をいくつかに切断してもそれぞれが完全なヒドラとして復活します。
その驚異的な再生能力が、ギリシャ神話の怪物ヒュドラを連想させたのでしょう。
6位 テュポーン
引用:Ancient Artifacts
テュポーンはギリシャ神話に登場する怪物で、地母神ガイアの子として最高神ゼウスに対抗し、一度はゼウスを打ち破るほどの強さを持っていました。
特筆すべきはその巨大さで、頭は星に届き、両手を広げれば世界の東西の端に達達したと言われています。
更に下半身は巨大な毒蛇で、肩からも無数の蛇が生えており、恐ろしく輝く目からは火を吐くこともできました。
そのような恐ろしい姿をした怪物テュポーンは、地母神ガイアがゼウスを倒すための最終兵器として生み出されました。
そもそもガイアとゼウスの間には浅からぬ因縁が有りました。
ガイアと天空の神ウラノスとの間に生まれたのが、クロノスを始めとするティタン神族と呼ばれる巨人族で、ゼウスはそのクロノスの息子です。
いずれゼウスとクロノスは天地の覇権をかけて争い、勝利したゼウスはクロノスとティタン神族をタルタロスと呼ばれる冥界に封印してしまいます。
子供たちが封印されたことに怒ったガイアは、さらに息子である巨人族ギガースを使って戦いを挑みますが、これも打ち破られます。
そしてガイアがラスボスとして送り込んだのがテュポーンなのです。
宇宙を揺るがすほどのテュポーンが神々に挑むとあって、ゼウス以外の神々はすっかりビビってなんと逃げ出してしまいます。
テュポーンとゼウスの戦いは天地だけでなく、地獄や冥界までも轟かせるほどの熾烈なものになりますが、ついにはテュポーンがゼウスの武器を奪い、さらには手足の健までも切断して洞窟に閉じ込めてしまいます。
ヘルメスの助けもあってなんとか逃げ出したゼウスは、再びテュポーンとの戦いに望みます。
再び天地は揺れ、炎と雷鳴が交錯する激しい戦いとなりますが、勝敗を分ける鍵となったのは、意外なものでした。
リベンジに燃えるゼウスに押されたテュポーンは、運命の女神モレイラを脅して「勝利の果実」を手に入れますが、実はモレイラがテュポーンに渡したのは、あらゆる望みが叶わなくなる「無常の果実」だったのです。
果実を口にして力を失ったテュポーンは敗走を続けます。
ゼウスの雷によってその体を焼かれ、体の蛇たちも焼き尽くされ、ついにはエトナ火山の下敷きになり、封印されてしまったのです。
テュポーンが封印から逃れようともがくたびに、エトナの山は火を噴くようになったと言われています。
多くの怪物や巨人が登場するギリシャ神話ですが、最高神であるゼウスをここまで追い詰めたのはテュポーンだけなのではないでしょうか。
5位 アスタロト
引用:DeviantArt
アスタロトはベルゼブブやルシファーと共に魔界の支配者と称されている著名な悪魔です。
ベルゼブブと同様に元々は天使であったとされており、天使だった頃の地位は第三位に当たる座天使の地位にいたと言われています。
その容姿は非常に不気味で、全身黒装束で身を包み、常に唇は真っ赤な血で濡れています。
右手には毒蛇を持ち、ドラゴンのような巨大な怪物にまたがっており、そして全身から耐え難い悪臭を放っていると言われています。
その悪臭に耐えるためには、鼻先に魔法のかかった指輪をかざす必要があります。
人間が苦しむ様に喜びを感じ、更には人間を怠惰に導くという冷酷な悪魔ですが、学問を修める人間に対しては敬意を表すると言われています。
なので、もし彼を呼び出し、更に全身から放つ悪臭に耐えることができるのなら、質問者に高い科学技術を伝え、更には過去と未来を正しく見通すこともできるそうです。
このように、不気味でありながらもどこか知的さを感じさせる悪魔ですが、このアスタロトもベルゼブブ同様、元々はこの地で信仰されていた神の一人でした。
そのルーツは女神イシュタルと言われており、オリエント全体で非常に古代から信仰されていた豊穣の女神です。
非常に広い地域で信仰され、ギリシャではアフロディーテ、またエジプトでは戦争の女神アストレトと呼ばれました。
更にはインドの女神カーリーやサラスヴァティ(弁財天)にも影響を与えたという説もあります。
カナンの地でも美の女神、豊穣の女神アスタルテとして信仰されていましたが、唯一の男性絶対神を仰ぐユダヤの宗教にはやはり受け入れられず、性別すら変えられ、悪魔として扱われることになってしまったのです。
悪魔となった後も非常に高い地位で扱われ、高い知能を持った姿で描かれているのは、元々の信仰がいかに強かったかを表しているのかもしれません。
4位 べルゼブブ
引用:Rebel Circus
ヘブライ語で「ハエの王」を意味するベルゼブブは、魔界においてはサタンに次ぐ悪魔であり、魔界の君主とも呼ばれている最高位の悪魔です。
資料によってはサタンと同一視されていたり、あるいは実力ではサタンやルシファーをも凌ぐとされているものもあります。
その名の通りハエの姿で描かれていることが多いベルゼブブですが、中には人としての姿で描かれてものもあり、それによると巨大な玉座に腰掛け、炎の帯を二本の角の生えた頭に巻き、全身は真っ黒で足はアヒル、尻尾は獅子のようだったとされています。
さらに眉毛はつりあがり、目をぎらつかせていたそうです。
悪魔として非常に高い評価を受けているベルゼブブですが、それもそのはずで元々は天界でも最高位の熾天使でした。
ミカエルやラファエルとも同級の天使だったベルゼブブですが、同じく熾天使だったルシファーと共に神と争い、そして同じように悪魔の地位に落とされてしまったのです。
魔界に落ちた後は、地獄のナンバー2として「蝿騎士団」を結成し、そこにはアスタロトなどの著名な悪魔が所属しています。
ところで、一緒に魔界に落ちてきたルシファーは、悪魔となった後も立派な羽を持つ威厳のある姿で描かれることが多いのに対し、同じ熾天使だったのに、なぜベルゼブブはよりによってハエの姿で描かれるようになってしまったのでしょうか。
実はこのベルゼブブは、もともとカナンに住んでいたペリシテ人が信じていた宗教の最高神で、その名をバアル・ゼブル(気高き王)といい、砂漠に豊穣の雨をもたらす貴重な存在でした。
しかし後から約束の地カナンに入植してきたユダヤ人は、唯一神を信仰していたため、このペリシテ人の宗教を非常に忌み嫌いました。
そのため音を一音だけ変えて、バアル(王)・ゼブブ(蝿)と呼び換え、邪教の悪魔としてしまったのです。
ちっぽけな蝿の王とされてしまったベルゼブブでしたが、元々が大変に強力な神だったためかその力を失うことはなく、また逆にキャラの立ちやすい容姿となったせいか、後世の作品にも数多く登場することになりました。
『新約聖書』や、ダンテの『神曲』などにもその名前を見ることができます。
3位 アバドン
引用:Amino Apps
聖書関連の悪魔をもう一つ紹介しましょう。
ヘブライ語で破壊者を意味するアバドンは、奈落の王として神に背いた堕天使やルシファーを千年もの間地獄の底で縛り付け見張る存在です。
地獄の主という肩書から悪魔とされていますが、実際には神に仕える天使の一人であるという説もあります。
ただ時代が経つに従い、次第に堕天使や悪魔と考えられることが多くなっていったようで、それは『ヨハネの黙示録』で描かれた、人類に壮絶な災厄を与える描写の影響が大きいでしょう。
文明社会の滅亡を描いた『ヨハネの黙示録』の中で、アバドンは神が人間に対して与えた災厄のうち、5番目の災厄として登場します。
5番目の天使がラッパを吹くと、地面に底なしの穴が開き、奈落の底から煙とともにアバドンが現れ、その煙のために世界は昼間でも闇に閉ざされてしまいます。
そしてその煙の中から飛び出したのは、恐ろしい容姿の大量のイナゴでした。
そのイナゴは人間の顔と女性の髪を持ち、サソリの尾と獅子の歯を持っており、頭には王冠を載せていました。
そしてそのサソリの尾で、額に刻印のない者、つまり神を信じていない全ての者を刺すのです。
そのイナゴに刺されたものは、5ヶ月もの間死よりも苦しい激痛を味わうことになりますが、その毒は、人を死に至らしめることはありません。
つまり神を信じない全ての異教徒たちは、死ぬことすら許されず、地獄とも言える苦しみを味わい続けることになるのです。
このような恐ろしい描写が、天使の行いとしてはふさわしくないと判断され、堕天使や悪魔として看做されることになったのかもしれません。
2位 スルト
引用:SAGA OF TITANS
スルトは北欧神話に登場する巨人で、最終的に世界を滅亡に導く存在です。
北欧神話とは北欧がキリスト教化される以前に人々に信じられていた神話であり、主にアースガルズに住む神々と、ムスペルヘイムとニブルヘイムに住む巨人達との戦いを描いています。
特徴的なのがその終末思想で、ラグナロクと呼ばれる神々と巨人たちの終末戦闘で世界は完全に滅亡してしまうと考えられていました。
そしてラグナロクの最終段階で登場するのが巨人スルトなのです。
スルトは世界の始まりから存在していたといわれ、ムスペルヘイムの入り口を守る炎の巨人です。
ただ、エッダと呼ばれる神話の各章には全く登場せず、やっと最終戦争であるラグナロクの際に初めて登場してきます。
ラグナロクが始まり、巨人たちがアースガルズに迫ります。
邪神ロキや巨大な狼であるフェンリル、また大蛇ヨルムンガンドが迫ってくる中、巨人スルトも全身から巨大な炎を燃え上がらせながら南から攻めてきます。
そして主神であるオーディンはフェンリルに飲み込まれ、最強の雷神トールも大蛇ヨルムンガンドと相打ちになってしまうという絶望的な状況の中、スルトは豊穣の神フレイと対峙することになります。
フレイは最強の剣である『勝利の剣』を失っていたため、鹿の角を武器として戦うこととなり、そしてスルトに敗れ無残に戦死してしまいます。
多くの神々が死に、また巨人族も次々と倒れていく中、太陽は光を失い暗闇となり、星々もすべて消滅します。
大地はひび割れ、生き残ったわずかな人々も最後にスルトが放った巨大な炎に焼き尽くされます。
そしてその炎は神々の世界も、人々が暮らす世界も、そして巨人たちが暮らす世界をもすべてを焼き尽くし、この世界は完全に滅亡してしまうのです。
世界に壮絶な滅びをもたらす巨人スルトは、アイスランドの火山がモチーフになっているといわれています。
アイスランドは、激しい火山活動が極寒の大地に繰り広げられている島国です。
そのような厳しい自然の情景が、巨人スルトを生み出したのかもしれません。
1位 ルシファー
引用:Humor Nation
明けの明星を指すラテン語からその名がとられたルシファーは、すべての悪魔の頂点に位置する存在で、その名が指す通り、元は輝かしい天使の長だったと言われています。
天使だった頃のルシファーは最高位の熾天使に属し、まさに神に次ぐ存在として、唯一神の玉座の右側に立つことを許され、大天使ミカエルとは双子の兄弟であったという説もあります。
そのような偉大な天使だったルシファーが、なぜ堕天使となり、悪魔の地位に落とされてしまったのでしょうか?
ある説では、強大な力に驕ったルシファーが、自らが神になろうと神に戦いを挑み、そして敗れて天界を追われたとされ、またある説では、神が自らの姿を模して作った人間に対して跪き、それに仕えるよう強要されたことに反発して神に戦いを挑んだとも言われています。
神以外の者に対して跪くことを拒んだということは、ある意味神に対して純情な忠誠心を持っていたのかもしれませんし、そもそも人間とは敵対する宿命にあったのかもしれません。
さて、いずれにしてもルシファーは神に対して戦いを挑みます。
ルシファーとともに全天使の3分の1が付き従い、共に戦ったと言われています。
しかしやはり神の力は偉大であり、さらに盟友でもあった大天使ミカエルの軍勢に敗れ、ルシファーとそれに従った天使たちは天界を追われ、地上に落とされて堕天使として悪魔となってしまうのでした。
魔界の長となったルシファーは、七つの大罪のうち最も罪が重いと言われる「傲慢」を司る悪魔となりました。
また蛇にその姿を変えてアダムとイブに知恵の実を食べるようそそのかし、憎き人間たちを天界から追いやることにも成功しました。
ルシファーは自由にその姿を変えることができるともされており、人間界にその姿を現す時には絶世の美青年として、また世界の終末の際には赤い巨大な龍の姿で現れると言われています。
人間に嫉妬し、そして人間を誘惑し続けるルシファー。
誰よりも神に近い存在だったが故に、神の分身として土から作られた人間が許せなかったのかもしれません。
まとめ
いかがでしたか?
世界の様々な神話の中から、特に戦闘力の高いものや魔力の強いものを紹介しました。
昔の人々は、理解できないものや恐怖を感じるものに人格を与え、悪魔や怪物、妖怪の仕業として理解しようとしていたのかもしれません。
そしてそのイメージは、現代においても映画やゲームの世界で生き続けているのです。