世界には驚くような値段のする絵画が山ほどあります。
ただの紙とインクからできているものなのにどうしてここまで値段が上がってしまうのでしょうか?
人間の文化とはやはり恐ろしいものです。
今回この記事ではそういった世界の高価な絵画を10点ほど紹介していきます。
世界の名絵画に興味のある方、お金の話が好きな方、これらの絵画の購入を検討されている方はよかったらこの記事を参考にしてみてください。
① 山水十二屏(価格158億円)
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1925年に、中国の画家斎白石(1864~1957年)によって描かれた絵画です。
斎白石は近代画家として中国では人気が高く、「人民芸術家の称号」を与えられている作家になります。
中国の絵画では世界最高値の作品です。(2017年度)
斎白石が北京に住む、医者の珍子林に贈呈した作品となります。
その後、1950年代に斎白石の女弟子にあたる郭秀儀、黄■翔(■は王へんに其)夫妻に譲渡され半世紀保管されていました。
縦180センチ、横47センチのサイズの掛け軸の中に「江上人家」、「石岩双影」、「板橋孤帆」「柏樹森森」、「遠岸余霞」、「松樹白屋」、「杏花草堂」、「杉樹楼台」、「煙深帆影」、「山中春雨」、「紅樹白泉」、「板塘荷香」と斎白石の自作の歌を十二の絵に分けて描かれています。
十二の絵を統一して、表装(紙を掛け軸や巻物に装飾する事)されております。
この作品には、「書道」「詩」「絵画」「篆刻」(木や石に印字を彫ったもの)の4つの要素が含まれている貴重な作品に仕上がっております。
篆刻は斎白石が、もともと大工で物を作る技術に長けており大胆なデザインを精巧に作られています。
花や木を題材にした絵では竹の枝や蓮の茎極端に長く細く描かれております。
山水画になると山と川、船だけ描くといったシンプルな作品に仕上がっています。
斎白石の作品は代表作として「借山図巻」、「石門二十四景」などがあります。
② サルバトール・ムンディ(約200億円)
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1940年~1519年頃にレオナルド・ダ・ヴィンチにより制作された油彩作品となります。
世界の救世主の象徴として、イエス・キリストの肖像が描かれており、「男性版のモナリザ」とも呼ばれる作品です。呼び方は他にも「ラスト・ダ・ヴィンチ」とも言われています。
絵画には、ルネサンス風の青いローブを身にまとい、キリストが右の手の指を十字に切り、左の手は水晶玉をもって祝祷(祝福の形)をしています。
サルバトール・ムンディとはラテン語で世界の救世主という意味があります。
左手に持っている水晶玉は一般的に天の天球の象徴として絵画の解釈をされています。
この作品はフランス王ルイ12世と王妃アンヌ・ド・ブルターニュの依頼で制作されたことが高いとされる作品です。
1500年頃に制作された後に、17世紀にイギリス王室が所有した後に長年の間行方が分からなくなっていました。
1900年に入るとイギリスの商人がダ・ヴィンチの弟子ベルナンディノ・ルイニによる作品として本作品を購入したことで再発見されます。
再発見された当初は、ダ・ヴィンチの作品ではなく、弟子により制作されたものとして専門家に鑑定されていました。
一部の鑑定士はダ・ヴィンチ本人の作品であると思われていたが、幾度にも塗り重なれた痕や修復作業でうけた損害が多くありました。
そのため、ダ・ヴィンチのオリジナル作品との判別が出来なかったために鑑定することが出来ませんでした。
2005年になると最新のテクノロジーを利用して、プロの鑑定団により真作であることが判明します。
絵画はその後、修復を得て2011年ロンドンのナショナル・ギャラリーに初めて展示をされることとなり世界に注目を浴びる作品になりました。
2017年11月15日にニューヨークのオークションにて、サウジアラビアの文化大臣バッダー・ビン・ファルハン・アル・サウド王子により落札されます。
2017年12月9日にアブダビ文化観光局が、ダ・ヴィンチの作品「サルバトール・ムンディ」を獲得したことを公式に発表します。
2017年後半にルーブル・アブダビで展示予定でしたが、2018年9月に無期限の展示キャンセルが発表されてから現在絵画がどこに所蔵されているかが分からなくなっている状態です。
2019年6月に、美術品市場ニュースサイトの「アーネットニュース」にてサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子のヨットにあると報道されているが確かな情報であるかは不明とされています。
本作はダ・ヴィンチの代表的な技法である顔のスフマート効果(深みや、形状・ボリュームの認識を造り出すために色彩の透明な層を上塗りする技法の事)で描かれています。
手の書き方も緻密に描かれており、指のしわ、骨格、筋肉の細かい動きが分かるような表現をされています。
レオナルド・ダ・ヴィンチの代表作として「モナリザ」、「最後の晩餐」などがあります。
③ アルジェの女たち(約215億円)
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1954年~1955年の冬にかけて、パブロ・ピカソにより制作された油彩作品です。
フランスの画家ドラクロワがハーレムの女性たちを描いた「アルジェの女たち」のオマージュとして制作されました。オマージュ作品はA~Oまで合計15作品連作で作られています。
パブロ・ピカソは1940年の初め頃ラフスケッチ版を制作しました。
当時ドラクロワの作品を研究するために、10年間定期的にルーブル美術館に通っていました。
1954年から約8年間続いたとされる、アルジェリア民族闘争が発生しました。
パブロ・ピカソはこの時事問題に触発されてから本作品の制作に本格的に始めていきます。
本作品はムーア人が支配していたスペイン時代のアルジェリアと、パブロ・ピカソが生きていたアルジェリアの独立戦争を関連付けて描いています。
ドラクロワが北アフリカ旅行の時に現れた、強烈な陽光に光と色彩の重要性を発見しました。パブロ・ピカソも北アフリカで見つけたプリミティブで原始的な魅力を描いてドラクロワのアフリカ発見と関連付けていきます。
このような背景を基に制作されたこの絵画の主題は、「伝統のより良い理解と同時にその場所からの自由と独立」です。
独立戦争、古典巨匠、媚婦街の女、アフリカの発見など様々な要素とパブロ・ピカソ自身の過去の歴史を関連付けした作品に仕上げております。
パブロ・ピカソの代表作として「ゲルニカ」などがあります。
④ 赤いヌード(腕を広げて横たわる裸婦)(約182億円)
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1917年に、アメデオ・モディリアーニにより制作された油彩作品です。
アメデオ・モディリアーニの代表作品の中で一番複製されて展示してある作品の一つとされています。
アメデオ・モディリアーニの作品で最高価格を記録した作品で、オークションにより中国の実業家により購入されました。
本作は1917年に、アメデオ・モディリアーニの絵画商人レオポルド・ズボロフスキーの依頼で制作されている「ヌード画シリーズ」の1作品です。
1917年ベルテ・ウェイル画廊で開催されたアメデオ・モディリアーニの最初で最後になる個展に展示されました。
人体を崇拝する伝統と近代的な表現の融合はアメデオ・モディリアーニによって成し遂げられています。裸体画の復活に貢献している作品です。
本作品はモダンアートの一部分であり、パブロ・ピカソやティツィァーノの「ウルビーノのヴィーナス」からインスピレーションを受けて描かれています。
本作品のような裸体の賛美には、挑発的なポーズが好ましいとされていてそれに合わせて描かれています。
裸婦が横たわる赤いシートによって、性的表現を高めるように作品を仕上げています。
アメデオ・モディリアーニのその他の代表作品は、「赤毛の若い娘の肖像」「ジャンヌ・エビュテルヌの肖像」などです。
⑤ ナフェア・ファア・イポイポ(いつ結婚するの)(約321億円)
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1982年ポール・ゴーギャンにより制作された油彩作品です。
約半世紀の間スイスのバーゼル市立美術館に実業家のルドルフ・シュテヘリンが貸し出しをしていました。
2015年2月に、カタール王室のシェイカ・アル・マヤッサによりオークションで落札されます。世界歴代最高価格で取引された絵画の一つとされます。
1891年にポール・ゴーギャンはタヒチへ旅行に行きました。
その目的はプリミティブ・アートに影響を受けたフランス画家の類似作品ではなく、純粋に独自のプリミティブ・アートを創造するために「エデンの園」を見つけに行ってます。
そこで現地の人々と出会い、多くのネイティブ女性たちを描いていてその時に描かれた作品です。
本作品では全面と中央の地面は、緑、黄色、青で描かれています。
伝統衣装に身を包んだ女性は真ん中の地面の境界線の所に腰を下ろして少し挑発しているような仕草を見せて描いています。
西洋風のドレスを着た女性は、真ん中の地面に腰を下ろしているように描かれています。
学者のリチャード・フィールドによると、前に乗り出している女性の左耳についている白いティアレの花は、彼女が出会いを求めていることを示していることを意味すると言われています。
後ろの女性は、仏教の影響を受けていて、手のポーズは仏像が両手で示す象徴的なジェスチャーの「ムドラー(印相)」であると解釈されています。
この仏教のジェスチャーは、ポール・ゴーギャンが日本絵画の影響を受けたことから描かれたのではないかと言われている部分です。
後ろの女性が前の民族衣装を着た女性に結婚をするのかと、日常会話をしているタヒチの女性のひと時を描いています。
本作品はドラクロワの「アルジェの女たち」を基盤にした作品と言われています。
ポール・ゴーギャンのその他の代表作品は、「二人のタヒチ女性」、「死者の霊が見えている」などです。
⑥ インターチェンジ(約300億円)
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1955年にウィレム・デ・クーニングに制作された油彩作品です。
2015年にアメリカの大手ヘッジファンド運用会社シタデル・インベストメントの創業者のケネス・グリフィンにより個人間取引によって3億ドル(約300億)で購入されています。
2015年当時では最も高額な油彩作品として記録を更新した作品になります。
本作品は、具象であるとも抽象ともつかないような表現で描く技法アクション・ペインティングで描かれています。
作品全体は躍動感に満ち溢れている表現をされています。
絵画には、いかなるオブジェクトも描かれておらず、「悲しい」・「嬉しい」などの特定の感情をはっきり描写されいません。
それでも鑑賞者には、ダイナミズムや動きの感覚を錯覚させるような意図を出すようにして仕上げられています。
激しい筆のストロークを計算して描かれているこの構図はウィレム・デ・クーニングの主題や技術を融合している完成度の高い作品となっています。
ウィレム・デ・クーニングの代表作は他にも「女性3」「水の中の女」などがあります。
⑦ カード遊びをする人々(約327億円)
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1984年~1985年にかけてポール・セザンヌにより制作された油彩作品です。
「カード遊びをする人々」は全部で5点あり各作品でサイズや人物の数、ゲーム設定を変えて作られています。
2011年にカタール王室が「カード遊びをする人々」の1点を購入しています。
他4点はそれぞれニューヨークのメトロポリタン美術館、パリのオルーセ美術館、ロンドンのコールドギャラリーやフィラデルフィアにあるバーンズ・コレクションに所蔵されています。
本作品のシリーズは1890年初頭~半ばまで、晩年のポール・セザンヌ芸術の礎の作品と言われています。
作品の中で描かれているのは、パイプを銜えてカードゲームに没頭するプロヴァンスの農民の姿です。
描かれている農民は全て男性でカード遊びに熱中して顔をうつむけて目の前の勝負に没頭しています。
ある評論家はこの絵の登場人物たちがゲームに没頭している姿は画家自身、芸術に没頭している姿を映し出したものだとも言われています。
またこの作品のシリーズには、17世紀のオランダとフランスの風俗画の文脈を強く強調し、ポール・セザンヌ独自の手により改良された作品です。
このような絵画であれば居酒屋で酔っ払った悪党や賭博者が騒々しくカード遊びをしている風景が描かれるのですが、ポール・セザンヌはそれを簡素で仏頂面の農民に置き換えて描いています。
ポール・セザンヌのその他の代表作に「サント=ヴィクトール山」「リンゴとオレンジ」などがあります。
⑧ 水蛇Ⅱ(約196億円)
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1904年にグスタフ・クリムトにより描かれた油彩作品です。
2013年ロシアの実業家ドミトリー・リボロフレがスイスの商人から購入して、現在まで個人の蔵で保管されています。
グスタフ・クリムトの最盛期の作品の一つです。水中生物との密なる関わりは、グスタフ・クリムトのような象徴主義の傾向にあった作家には人からすれば未知なるもので、超越的な宇宙を表現する代表的な方法の1つとされています。
本作品は、水彩絵の具、テンペラ、金の葉に対する貼り絵という技法が用いられています。
このように複数の素材を組み合わせた作品をミクストメディア作品と言われ、グスタフ・クリムトの作品の中では珍しい技法で制作した絵画になります。
本作品で描かれている複数の女性の裸体は、世紀末にふさわしい退廃的な官能美を纏っておりその特徴が鑑賞者を魅了し続けています。
グスタフ・クリムトは美しい女性を描いた作品が多く、本作に描いた女性もその経験から培われた技術がふんだんに組み合わさっており非常に緻密な女性像の描写が見て取れます。
水蛇Ⅱは同作家の作品の水蛇Ⅰに比べてサイズ50×20センチの大きい絵画になります。
本作品にはタイトルに水蛇Ⅱと書かれていますが、人間の女性が数名横たわっているだけで、蛇の外見は描かれていません。
女性たちの周りを囲んでいるのは蛇ではなく、水草が女性たちを囲むように描くことで水中であることを表現しています。
グスタフ・クリムトのその他の代表作は「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅰ」、「メーダ・プリマヴェージ」があります。
⑨ ナンバー17A(224億円)
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1948年にジャクソン・ポロックにより描かれた絵画です。
絵具缶から絵具を直接垂らして、線や丸など多種多様の形を表現したドリッピ・ペインティングと呼ばれる方法で描かれたドリッピングシリーズの初期作にあたります。
一目見るとランダムかつ自然に作られたような構図に見えますが、ジャクソン・ポロックは制作するにあたって自己の動きをコントロールして調整しながら描かれた形跡があります。
当初ドリップ・ペインティングによる作品は人気が少なく、美術市場の価値は低い物でした。
周囲の評価も賛否両論で、作品の価値は高いものではありませんでした。
1948年ニューヨークのベティ・パーソンズ・ギャラリーで開催された個展の中で披露されることで注目を集めるようになりました。
その後「Life Magazine」の雑誌の中で現役のアメリカでもっとも偉大な作家と評価をされることで評論家も認める作品となりました。
2016年美術コレクターのケネス・グリフィンがデヴィッド・ゲフィンから個人間の取引により購入されています。
ジャクソン・ポロックのその他の作品は、「男と女」、「ポーリングの構成」などがあります。
⑩ No.6(すみれ・緑・赤)(約199億円)
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1951年にマーク・ロスコにより描かれた油彩作品です。
主題はなく色だけで鑑賞者に強烈なメッセージを伝えている作品です。
この作品を描いた時マーク・ロスコはまだ貧しく画家として売れてない時期でした。
憂鬱な時期に仕上げた「No.6」はマーク・ロスコの感情的な部分も反映されているため、全体的に不均衡でかすみがかった暗い色味で描かれています。
1952年ニューヨーク近代美術館で開催された「15人のアメリカ人展」にて正式に抽象表現主義者のメンバーとして招待されることで有名になります。
2014年ロシアの富豪ドミトリー・リボロフレフがスイスの画商から購入して個人で保管されています。
マーク・ロスコのその他の代表作は、「緑色と栗色」「赤いスタジオ」などがあります。
まとめ
世界の高価な絵画は、世界の人たちから愛される有名な作品が多くあります。
絵画はどの作品も美しく、中には見た目で高額なのか分からない作品も存在しています。
高価な絵画は見た目の美しさも作品の価値を高めていますが、それ以上に作家の個性が色濃く出ているオンリーワンの作品であることも価値を高めている一つの付加価値になっていると思います。